コンポジション
書くのが楽しくなる作詞の技法

西端慶一

音楽制作プロダクションで作詞部門のディレクターを務める筆者が、オリジナル曲を初めてつくる主人公・ヨシオを、広く深い作詞の世界に誘う。

毎週火曜更新。

コンポジション 書くのが楽しくなる作詞の技法

#001 はじめに
2019-05-25

楽器を手にして、音楽の興奮を知り、バンドを組んで、好きなアーティストの曲をいくつかプレイする。何度かステージにも立った。バンドメンバーとの絆も深まり、長くこのバンドを続けたいと願うようになる。多くのバンドにとって、その次にあるのは、オリジナル曲をつくるという作業です。

既存の曲をいくつかコピーしながら、音楽的な理屈はなんとなくわかってきた。コードも、スケールも、それっぽい形にはできるようになった。メロディを乗せることだって、もう不可能じゃない。よし、作品を仕上げよう!

ここで、一人の主人公を紹介しましょう。ヨシオくんです。高校入学と同時に軽音部に入り、ギターとボーカルを担当。初心者でしたが、音楽の魅力にすっかり浸かり、秋の学園祭では、サンボマスターのコピーバンドでギターボーカルとしてステージデビュー。その後、在学中は、ASIAN KUNG-FU GENERATIONeastern youthELLEGARDENなど、ギターボーカルのある曲を次々にプレイ。学園祭や新歓イベント、学校同士の交流ライブなどで腕を磨きます。そして高校は卒業。けれどどうしても、3年間一緒にステージに立った仲間たちと離れたくない。同じ願いを共有していた仲間を誘って、バンドをつくりました。そして、オリジナル曲の制作に進出。鼻歌だけで、オケだけの曲がひとつできあがったりします。

ここで、ヨシオくんは途方に暮れて頭を抱えます。この曲を、作品として成立させる最後の作業が待っているからです。作詞。何から手をつけていいのか、さっぱりわかりません。最初からすらすら言葉を繋げられるひとは、そうそういないのです。

ギターなら、さまざま曲をコピーする中で、ドミナント、サブドミナント、トニックなどのコードワークは(それらを言葉として認識しているかどうかはともかくとして)、なんとなく身についてくるでしょう。ベースも、コードとベースラインとの関係が、うっすらと見えてくると思います。ドラムだって、リズムパターンとフィルイン、キメと、身につけるべきスキルを、コピープレイを通じて知るはずです。

けれど、作詞だけは、そうした前提となるアクションが見えにくいのです。これまでコピーした曲のリリックをどれだけ眺めても、作詞のスキルが身につくとは限りません。むしろ、いろんな曲を知れば知るほど、迷いの度合いがさらに深くなることでしょう。

それでも、作詞を後回しにしているうちに、オケだけの曲はどんどんたまっていきます。リリックがないと、音源もつくれなければ、ステージに上がることもできません。メンバーからも、早く書けという有形無形のプレッシャーが押し寄せてきます。とはいえ、そのメンバーたちも、作詞についてはまったくの素人。プレッシャーをかけることはできても、解決策を示すことはできません。

筆者は、もともとバンドでデビューしましたが、その後、レコード会社の制作部門に転身。主に、作品のリリックの校正を担当しました。独立しましたが、古巣を中心に、さまざまなアーティストの音楽作品の制作に関わっています。このあたりは、近いうちに、詳しくお話できると思います。

この記事では、ヨシオくんに、作詞の方法論をレクチャーしつつ、作品を仕上げるお手伝いをしていきます。まずは、ひとつ作品を書ききること。できれば、それを通して、作詞の面白さ、奥深さを知って欲しいと思っています。もう、書きたくて書きたくて仕方なくなるくらいに。

そして、世の中にたくさんいるであろうヨシオくんのような方にも、同じ経験をしていただければ嬉しいです。